2026
06.10
教育研究情報
健康科学研究科の丸山 翔さんが国際学会にて研究成果の発表を行いました
大学院健康科学研究科・博士後期課程2年
丸山 翔

本学大学院健康科学研究科・博士後期課程2年の丸山 翔さん(河野ゼミ)が、2026年6月1日~3日に米国バージニア州ロアノークにて開催された国際学会IBEC 2026(International Biochemistry of Exercise Conference)に参加し、自身の研究成果を発表しました。本学会は、「運動」を切り口として、健康寿命や老化、代謝、脳機能など全身へ及ぼす影響を分子レベルから議論する国際学会です。世界各国の研究者が集い、運動適応や老化メカニズムに関する最新の研究成果が発表されました。本学会では、骨格筋、ミトコンドリア、多臓器間ネットワークなど多様な視点から活発な議論が行われました。
以下、丸山さんの報告内容です。
私は、「なぜ加齢で筋肉が衰えるのか」という重要な課題に取り組んでいます。加齢に伴い骨格筋の量や機能は低下し、最終的にはサルコペニアなどの病態発症へとつながります。しかし、その初期段階である"未病期"に生体内で何が起きているのかは十分に明らかになっていません。遺伝子の働きを調節するエピジェネティクスという仕組みに着目し、ヒストンH3.3のリン酸化修飾であるH3.3S31phが骨格筋老化にどのように関与するのかを研究しています。今回の発表では、加齢に伴うH3.3S31phの低下と、その上流制御因子候補であるCHK1との関連について報告しました。
学会では、自身の研究分野に関連する多くの発表を聴講しました。RNA-seqやメタボローム解析などのマルチオミクス解析を用いて、筋不活動による骨格筋の変化を網羅的に評価した研究では、筋活動量低下によって骨格筋での解糖系、TCAサイクルなどの代謝環境が大きく変化する一方で、レジスタンストレーニングによってその一部が改善される可能性が示されており、運動の重要性を改めて実感しました。
また、ミトコンドリア呼吸(mitochondrial respiration)の解析技術を開発するOroboros Instrumentsによる特別セッションも開催されていました。近年、運動適応や骨格筋老化研究においてミトコンドリア機能の重要性はますます高まっており、最新の解析技術や研究動向について学ぶ良い機会となりました。
さらに、多くの発表ではマルチオミクス解析を用いて生体応答を網羅的に評価する研究手法が採用されていました。一方で、発表者の多くは、オミクス解析によって得られる結果は「ある時点の状態」を切り取ったスナップショットに過ぎないことにも言及していました。そのため、観察された変化が原因なのか結果なのかを明らかにするためには、介入実験や時系列解析を組み合わせた検証が不可欠であるという考え方が共有されていました。この点は、日頃から河野研究室で議論している内容とも重なっており、自身の研究の方向性を再確認する良い機会となりました。
今回の学会は、私にとって初めての単独での海外渡航でした。渡航準備から現地での移動、学会参加、研究発表までを全て自身で行う必要があり、不安も多くありましたが、無事に終えることができました。また、「英語でコミュニケーションを取るしかない」環境に身を置いたことで、自身の英語力や国際的なコミュニケーション能力を実践する貴重な経験となりました。
今後も研究内容をさらに発展させるとともに、国際的な研究コミュニティに積極的に参画し、世界に向けて研究成果を発信できる研究者を目指して努力していきたいと思います。