新着ニュース
- 教育研究情報
阿部守一長野県知事の特別講義
「長野県における人口戦略の方向性」が行われました
松本大学図書館長
総合経営学部長 教授 清水 聡子
2024年11月13日、総合経営学科「基礎ゼミナールⅡ」(1年次必修科目)において、阿部守一長野県知事による特別講義「長野県における人口戦略の方向性」が行われました。阿部知事による松本大学での初めての講義となりました。
「長野県の人口推計と将来への影響」では、長野県の出生数・合計特殊出生率の推移、長野県の年齢3区分別人口の見通し、長野県の社会増減の状況について、説明がありました。男女・年代別にみると、就職期である20~24歳の転出超過が最も大きく、特に女性の転出超過が深刻です。30~39歳の子育て世代は転入超過が続いています。
将来起こりうる問題として、①労働力人口・消費者人口の減少により産業の成長力・競争力が低下し、賃金が減少、②地域の担い手不足による互いに支え合うコミュニティの弱体化、③高齢化に伴い、後世代の医療・介護・年金の負担の増加、④インフラ(道路・上下水道等)や行政サービス、地域公共交通の維持困難、⑤空き家や空き地が増加し、まちのスポンジ化が進行、スーパーや娯楽施設などが撤退、と5項目の指摘がありました。
一方、将来への希望の種として、①担い手の不足は、誰もが社会で活躍できるチャンスに、②子どもの数の減少は、個別最適な学びへの転換を促す好機に、③AI・ロボット技術等の飛躍的な発展は、人口減少の影響を緩和、暮らしをより便利で快適に、④人口構成の変化は、新たなビジネスチャンスに、⑤社会保障関係費やインフラ維持の負担増大は、行財政改革やまちの再生を促す契機に、と5項目の手がかりが示されました。
日本経済の30年を振り返り、他先進国に比べ日本経済の低迷を、1人当たり実質GDPの推移および2023年1人当たり名目GDP(IMF統計)、世界時価総額ランキングの推移、日本の貿易・サービス収支、投資収益、経常収支のデータから説明されました。また「豊かさ」に関する意識の変化について、2023年には「物の豊かさ」が「心の豊かさ」を上回ったことが紹介されました。さらに「自国の将来が明るいと思うか」に対するこども・若者の回答として、諸外国と比較すると、「明るい」と回答した割合は日本が最も低いことについて、「皆さんはどのように考えますか」と学生に問いかけがありました。
「長野県で現在策定中の人口戦略について」ではこれまでの検討状況、女性・若者、移住関係者、教育・医療関係者、関係団体との意見交換の報告がありました。人口減少は今後も続く見通しであり、すでに担い手不足などは顕在化しており、このままでは様々な問題がさらに深刻度を増すおそれがあります。こうした問題を乗り越えるためには、これまでの常識に捉われず未来を創造していくとの決意の下、私たちそれぞれが今から行動を起こしていくことが必要だと阿部知事は力説されました。
将来世代のためにも今を生きる私たちの責任として、明るい将来ビジョンとその実現策を戦略として取りまとめ、オール信州での実現を目指し、誰もがしあわせ(Well-being)を実感できるゆたかな社会を創るため、私たちができることを共に考えましょうと学生に向けて呼びかけがありました。
学生からは「地域の魅力や誇りをもって安心して暮らせる策を練っていく必要がある」といった意見や「若者が主導して改革を進めていかなければならない」、「若者自身が立ち上がり、今を変えていく必要がある」といった声があがりました。「外国人ももっと暮らしやすい、活躍しやすい環境づくりについて考えていることはありますでしょうか」という紙面の質問に対して、現在策定中の長野県人口戦略(仮称)での議論を踏まえ、「国籍に関わらず誰もがその存在と役割を認められる、誰一人取り残さない長野県を目指して取り組んでまいります。」と阿部知事から当該学生へのメッセージが届きました。
松本大学では「学びは、地域にある。」をキャッチフレーズに、地域の抱える課題を発見し、それを解決するための知見と実践力を身に付ける様々なプログラムが実施されています。総合経営学科「基礎ゼミナールⅡ」はA清水ゼミ、B古川ゼミ、C田中正敏ゼミ、D古田ゼミ、E岡﨑ゼミ、F小野ゼミと6名の教員が少人数ゼミナールを運営しています。グループワーク、ディスカッション、ディベート、を学び、グループごとに地域課題についてテーマを設定し、3回に分けてプレゼンテーションを実施します。阿部知事の特別講義に刺激を受け、学生は主体的に考え、自発的に動き始めています。
今回の特別講義では総合経営学科基礎ゼミナールの受講者115名、清水ゼミ3・4年生、松商短期大学部の飯塚ゼミ、小澤ゼミ、聴講希望学生155名の学生が参加いたしました。阿部守一知事、学生への温かいメッセージ、ありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。