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2026/01/30
  • 教育研究情報

健康科学研究科大学院生が伊那食品工業との共同研究成果を論文発表

ーフレイル(加齢に伴う心身の衰え)対策に向けた寒天由来成分の研究ー

健康科学研究科 ・健康栄養学科
准教授 黒川 優

― 伊那食品工業との産学連携で高齢期の健康課題に挑む ―
本学健康科学研究科 博士課程2年の倉澤里奈さんが、弘田量二教授(前所属)の指導のもと、寒天製品「かんてんぱぱ」で知られる伊那食品工業株式会社との共同研究として、高齢者の健康課題であるフレイル(虚弱)対策に関する研究成果を学術誌に発表しました。
本研究は、寒天由来の機能性成分であるアガロオリゴ糖に着目し、「食品に含まれる成分が、高齢期の体の動きや健康にどのような影響を与えるのか」を人を対象に調べた研究で、食品科学・健康科学・実践的評価を融合した研究として位置づけられます。

■ フレイルとは ― 高齢期の健康を左右する重要な課題
フレイルとは、加齢に伴って筋力や体力が低下し、「元気な状態」と「要介護状態」の中間にあたる状態を指します。歩くのが遅くなる、立ち上がるのに時間がかかるなどの変化が見られ、放置すると介護が必要になる可能性が高まります。一方で、この段階で食事や運動などの工夫を行うことで、元の元気な状態に戻れる可能性があることも分かってきています。そのため、日常生活の中で無理なく続けられるフレイル対策が重要とされています。

■ 研究の着眼点 ― 寒天由来「アガロオリゴ糖」に注目
倉澤さんが注目したのは、寒天を構成する成分を細かく分解して得られる「アガロオリゴ糖」です。アガロオリゴ糖は、腸内環境を整える作用や体の炎症を抑える作用などが、これまでの実験研究で報告されてきました。しかし、「実際に人が食べたときに、体の動きや健康にどのような変化が起こるのか」については、十分に調べられていませんでした。そこで本研究では、フレイルの前段階にある高齢者を対象に、アガロオリゴ糖を一定期間摂取してもらい、体の動きにどのような変化が生じるかを調べました。

■ 研究内容と主な結果
研究では、アガロオリゴ糖を摂取した前後で、「どれくらいの速さで歩けるか」「椅子から立ち上がって歩き、再び座るまでにかかる時間」など、日常生活に直結する動作を評価しました。その結果、アガロオリゴ糖を摂取したグループでは、歩く速さなどに改善の傾向が見られ、食品由来成分がフレイルの進行を抑える可能性が示されました。本研究成果は以下の論文として公開されています。

原著論文

また、関連する総説論文では、「アガロオリゴ糖とはどのような成分なのか」「どのような健康効果が期待されているのか」について、これまでの研究を分かりやすく整理し、今後どのような研究が必要かをまとめています。

総説論文

■ 産学連携による実践的研究の意義
本研究は、食品を実際に製造・販売している伊那食品工業株式会社と大学院が協力して行われました。企業と連携することで、「研究室の中だけで終わらない」「将来、食品として社会に役立つかどうか」を意識した研究が可能になります。このような産学連携研究は、大学院での学びを社会につなげる重要な取り組みです。

■ 博士課程で研究するということ
倉澤さんは、学部・修士課程での学びを経て博士課程へ進学し、食品成分と人の体の関係について専門的に研究しています。「食品が人の健康や生活の質にどのように影響するのかを、科学的に確かめられる点に魅力を感じました。企業との共同研究を通じて、研究が社会に役立つ形になることを実感しています」と語っています。


■ 本学大学院健康科学研究科の特徴
本学大学院健康科学研究科では、食品・栄養・運動・健康評価を横断的に学びながら、実際の人や社会を対象とした研究に取り組むことができます。博士課程まで一貫して研究を深められる環境が整っており、今回の研究成果は、大学院生が主体的に研究を進めた一例です。

■ 大学院進学を考える皆さんへ
高齢社会が進む中で、「食」「健康」「人の体の仕組み」を科学的に学ぶことの重要性はますます高まっています。本学大学院では、「研究を通じて社会に貢献したい」という意欲を持つ学生を広く募集しています。

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