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健康栄養学科の弘田量二教授の論文が、ヨーロッパ学術誌Allergy誌 (インパクトファクター6.048) に掲載
この度、本学健康栄養学科の弘田量二教授の論文「Triclosan-induced Alteration of Gut Microbiome and Aggravation of Asthmatic Airway Response in Aeroallergen-sensitized mice.」が、アレルギーおよび臨床免疫学のヨーロッパ学術誌Allergy誌 (インパクトファクター6.048) に掲載されることとなりました。
つきましては論文について、その要点をご紹介いたします。
Triclosan-induced Alteration of Gut Microbiome and Aggravation of Asthmatic Airway Response in Aeroallergen-sensitized mice.
(吸入アレルゲンで感作されたマウスにおけるトリクロサン投与による腸内微生物の変化と喘息反応の悪化)
著者 弘田量二(筆頭・責任著者) ほか7名
抗菌剤のトリクロサン(英語: Triclosan)は、医薬部外品の薬用石鹸、うがい薬、食器用洗剤、マウスウオッシュ、歯磨き粉、手指の消毒剤、及び化粧品など、様々な衛生用品で使用されている一般的な家庭用抗菌剤です。しかしながら、動物での研究で、トリクロサンが甲状腺や女性ホルモンのエストロゲン、男性ホルモンのテストステロンなどに影響を与える内分泌かく乱物質である可能性であることや、抗生物質に対する薬剤耐性強化の可能性が指摘されており、さらに、通常のせっけんと比べて優れた殺菌効果があるとは言えない理由も加わって、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、トリクロサンなど19種類の殺菌剤を含んでいる一般用抗菌石鹸の販売を2017年9月に禁止しました。今回の販売禁止には、病院などの医療機関で使用されている手の消毒薬 などは含まれておりません。
さて、このように人体への有害性が指摘されておりながら未だに使い続けられているトリクロサンは、アレルギーに罹りやすい人が使った場合にどのような悪い影響が出るのでしょうか。このことについては、未だ明らかになっていませんでした。
弘田教授らのグループは、ダニ抗原を吸入させてアレルギー性気管支喘息に罹りやすくした普通のマウス(注:アレルギー体質マウス)に、トリクロサンを飲ませてトリクロサンを飲ませなかったマウスと比較したところ、明らかに気管支喘息の特徴が現れました。一方、遺伝的にダニ抗原に反応しないマウス(注;アレルギー体質でないマウス)では、ダニ抗原とトリクロサンの両方を与えても全く喘息の特徴(※)は現れませんでした。
次に、それぞれの実験群マウスの糞便中の細菌遺伝子を解析したところ、ダニ抗原とトリクロサンの両方を与えたマウスではデルタプロテオバクテリア綱、クロストリジウム綱およびエリュシペロトリクス綱の細菌がトリクロサン用量依存的に増加したのに対し、バクテロイデス綱は減少しました。
結論として、トリクロサンを飲用させたダニ抗原吸入マウスではアレルギー性気管支喘息状態を悪化させ、この状態は腸内細菌の特定の細菌の増減と関連がありました。
このことから、アレルギーに罹りやすい人がトリクロサンを使い続けると、日常的に吸入しているダニやハウスダストなどとの組み合わせにより、アレルギー症状がより悪化するだろうという可能性が示されました。
※喘息の特徴:
吸入アレルゲンに対する気道の収縮が増すこと(喘息症状)、肺への好酸球の集積が多く見られること、肺洗浄液にふくまれるアレルギー特徴的なサイトカイン濃度が上昇すること、血液中のアレルゲン特異的IgE抗体が上昇すること
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