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2012/05/18
  • アウトキャンパス・スタディ事例

総合経営学科のナレッジマネジメント受講生・葛西ゼミ・成ゼミ合同アウトキャンパス・スタディを実施

2012年5月10日(木)、総合経営学部総合経営学科のナレッジマネジメント(担当:成耆政准教授)受講生・葛西ゼミ・成ゼミの合同で、企業訪問によるアウトキャンパス・スタディを実施した。今回は「ナレッジマネジメントにおける差別化戦略」というテーマをもって、岐阜県安八郡にある「未来工業株式会社」を訪問し、会社経営方針、とくに他社との徹底的な差別化戦略についての説明、工場と製品の見学,質疑・応答の内容で行われた。

未来工業株式会社の概要について簡略に述べると、業種としては電気設備資材、給排水設備及びガス設備機材の製造・販売である。昭和40年8月に創業され、現在の従業員は約800名、名古屋証券取引所市場第2部に上場している。年間売上高は約220億円で、山形村に松本営業所がある。
この未来工業はある意味でかなり変わったことをやる企業として、テレビやその他のマスコミに度々紹介され、年間平均約5,000名の見学者が訪れるほどの有名な企業である。今回のアウトキャンパス・スタディでは第1部として、企業の概要、とくに未来工業の差別化戦略について約1時間、説明を受けた。
主な内容を紹介すると次のとおりである。未来工業は「社員が幸せになる会社、社員が働きやすい会社」を目指し、なかなか他社では真似できないことをやっている。たとえば、「日本一、社員が幸せな会社の変な決まり」として、定年は70歳で給料も下げない。残業はない。どうしても残業しなくてはならない場合は、,もう1人雇う。社長が知らない間に営業所ができていた。ほうれんそう(報告・連絡・相談)禁止だから、社員が勝手につくる。すべての社員は正社員、パートやアルバイトは1人もいない。なぜなら、正社員ではない人間が真面目に技術を覚えようとするだろうかということと、人間をコスト扱いにしないからである。

未来工業の成長の鍵は、徹底した差別化戦略にある。たとえば上述したように、年間5,000人の見学者が訪れるが 1人当たり2,000円の見学料を取る。これも他社ではやってないからやるという。1人の社員で担当しており、これだけで年間1千万円の売上になる。訪問者は日本のみならず、韓国、中国などの海外からもたくさんきている。創業者の山田氏(現在は相談役)は、「韓国企業が注目する日本の経営者」というアンケート調査で5位にランクされたそうだ。ある意味、韓国では有名人である。私達が訪問した日の午前中にも中国からの団体訪問客が会社見学を行っていて、中国の国旗が掲げてあった。
他社と同じものはつくらない。儲かっていない会社と同じことをしても仕方ない。日本一・日本初にこだわる。常に考える仕組みを作る。そして社員のやる気を喚起させるために、モチを与えてモチベーションを上げる。たとえば年間140日の休み、年末年始は20日連休、育児休暇は3年、就業期間は08時30分から16時45分までで日本でもっとも短い就業時間である。5年に一度、全社員で行う海外旅行の費用は全額会社持ち。成果主義はとらないで年功序列制を維持している。社内に70あるクラブには審査なしで補助金を出す。規則は作らない。管理・命令はしない。営業にノルマはない。常に自分で考える。それで仕事が面白くなる。その結果、やる気が上がる。業績につながり、企業の成長を続ける。
「常に考える」未来工業の独創性を支える提案制度についても、簡略に紹介したい。まず、どんな内容でも書いて提出すれば、封を切る前に1件につき現金で500円支給する。毎月提案委員による表彰がある。年に1回、優秀提案賞や多数提案賞の表彰がある。年間200件出すと10万円で、多数提案賞の15万円を合わせると少なくとも25万円がもらえる。実際、去年は232件も出した社員がいる。

第2部は2つのグループに分かれ、約1時間、工場の中の見学を行い、設備や製品などについて説明を聞いた。
最後に第3部として、約30分間の質疑・応答の時間をもった。参加した学生たちは積極的で、鋭い質問もたくさんでて活発な議論が交わされた。たとえば、「このような経営のやり方で本当に儲かるのですか」「規則も作らず、管理・命令もしなくて本当にいいですか」「管理者の仕事は何ですか」「社員が失敗したときはどう対応するのですか」などなど。あっという間に時間切れで、企業見学が終了となってしまった。
今回の企業訪問によるアウトキャンパス・スタディで、学生たちは「他人のまねはしない、他人と同じことをしても仕方がない。日本の企業の成長のためには徹底的に差別化を図るべきである。そのためにはなぜ、なぜ、なぜと常に考え、行動に移すべきであることを肌で感じた大変有益な時間であった」「このような企業に就職したい」「もう一回訪問したい」と帰りの車中で話していた。感想を記したレポートが楽しみである。


本稿は、総合経営学科 成耆政准教授より寄稿いただきました。
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