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GPによる公開講演会を開催 今日の疫学の課題 -特に地理疫学について-

1月21日(土曜日)、最終年度となったGP関連事業で最後の特別講演会が現在、埼玉県立大学学長の要職にある三浦宜彦氏を招いて、会場が学生で一杯の中、開催された。三浦氏は私の大学院時代の後輩にあたり、普段、忙殺されているのは承知で無理を言って来松して頂いた。三浦氏は院生時代から疫学領域で研究活動をされ、日本疫学会や国際疫学会総会の学会長なども歴任している。



 講演会で紹介された題目は現在の疫学でよく俎上に載られる課題であり、学生たちに多くのマップを使ってわかり易しくお話しされた。講演要旨は次の通り。

 疫学における疾病地図は、19世紀中頃から、JohnSnowのコレラマップに代表される感染症対策を目的としたものから、疾病の発生要因に環境要因も含めて捉える疾病生態学へと発展してきた。1960年代に入るとATLAS of CANCERMORTALITY for JAPAN に始まって、多くの疾病アトラスが発表され、老人保健法の実施に伴い厚生省による健康マップも発行されてきた。

 最近では、SMRの少数問題を解決する方法として経験Bayes地図が普及し、疾病の地域差を表示することのみならず空間的関係データの生成、その結果の地図化などに有用な Geographic Information Systems(GIS)が疫学分野に普及してきている。

 また、肝がん死亡の地図を例にあげて5年ごとに推移を検討すると、死亡が増加するにつれて西高東低の傾向が顕著になること、1930年頃に出生したグループが他世代に比べて肝がん死亡のリスクが高いこと、それは、当時青年期であったその世代にそのHCV感染負荷を負っているためとの指摘があるとした。さらに、埼玉県の数死因の地理分布の要因分析を例にとって、GISの有用性を紹介した。



 最後に日本疫学会の今日の疫学の課題として、若手研究者の確保とスキルアップ、疫学研究の調査環境の改善、臨床分野との連携強化、社会貢献・社会へのアピールなどを挙げているが、地理疫学の分野では、特に研究調査環境の改善の一つである政府統計へのアクセスの改善が望まれるとして講演を結んだ。




本稿は、大学院健康科学研究科長 村松宰教授より寄稿いただきました。
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