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2011/10/26
  • アウトキャンパス・スタディ事例

総合経営学科の農業経営経済学受講生・葛西ゼミ・鈴木ゼミ・成ゼミ合同アウトキャンパス・スタディを実施

2011年10月20日(木)、総合経営学部総合経営学科の農業経営経済学(成耆政担当)受講生・葛西ゼミ・鈴木ゼミ・成ゼミが合同で、企業訪問によるアウトキャンパス・スタディを実施した。今回は「食料安全保障戦略における植物工場の意義と課題」というテーマを持って、岡谷市にある「株式会社ラプランタ」という植物工場を訪問し、施設の見学やプレゼンテーションを受けた。

 昨今の日本の農業・農村地域を取り巻く環境は食料自給率の低下、農業労働力の非農業部門への流出による基幹的農業従事者の急激な減少、それに伴い高齢化や過疎化の進行などで大きく変化しつつある。このような農業経営の担い手の確保における深刻な状況により、今後の国民への食料供給や農村コミュニティそのものの存続も危惧されている。特に、平成22年の日本の食料自給率はカロリーベースで39%で、国民への食料供給の6割以上を海外の土地、労働力、水資源などに依存している。

 このような状況の中で、「農商工等連携事業」の一環として農林水産省と経済産業省の積極的な政策的支援のもと、「植物工場」は食料安全保障の一つの有望な切り札であることは間違いないであろう。植物工場とは、施設(工場)内部環境をコントロールした閉鎖的、または半閉鎖的空間で、植物を計画的に生産するシステムのことである。すなわち、植物工場とは、環境および生育のモニタリングに基づいて、高度な環境コントロールを行うことにより、野菜などの植物の周年・計画生産が可能な栽培施設のことである。この植物工場による植物の栽培方法を「工場栽培」ともいう。農林水産省の資料によると、平成23年3月現在、日本には80社の植物工場が事業を行っている。

 今回の植物工場のアウトキャンパス・スタディでは、参加人数が多かったことで、2つのグループに分かれ、窓から工場の内部、すなわち、施設や植物栽培の状況を見学した後、会議室に移動し、五味文誠社長から植物工場と当企業の現況についての詳細なプレゼンテーションを受けた。その後、学生による質問の時間があり、学生達は設備に関すること、とくに現在の蛍光灯をLEDに交換した場合のコストのことや、この植物工場で生産された野菜の販売先等について質問し、五味社長の回答を真剣に聞いていた。実際、この会社では、電気代が生産コストの1/3を占めているとのことであった。

 今回、私たちが訪問した、株式会社ラプランタは長野県における代表的な植物工場として、民放の全国ニュースにも度々紹介され、見学者が後を絶たない有名な工場である。この企業は平成7年に設立され、現在、約22種類の完全無農薬・無添加物の安全・安心の野菜を生産し、年間売上高は約1億円である。生産された野菜は、業務用が51%、東京の大手百貨店への出荷が49%を占め、残念ながら県内のスーパーなどでは手に入れることができない。この企業では施設内の衛生管理も徹底し、栽培作業を行う従業員は清潔な作業着、作業帽、作業靴に着替えた上、アルコールによる手の消毒を行い、さらにエアシャワーを浴びてから施設の中に入り、作業を行っている。このような徹底した管理のもと、洗わなくても食べられる野菜が生産されている。今回、私たちも実際に、施設内に入りたかったが、人数が多いことと、準備のための時間がかかりすぎるなどのことで叶わなかった。

 今回の植物工場のアウトキャンパス・スタディにより、学生たちは「これは農業とはいえないかもしれない」「野菜が他の工業製品と同じように生産されている」「これなら日本の農業にも未来があるように思える」などの感想を話していた。確かに、従来の伝統的な農業経営では考えられない未来の農業経営かもしれない。

 帰り際に、五味社長のご厚意により参加者全員が植物工場で生産された「工業品」ともいえる美味しい野菜を一株ずつ頂いた。ご多忙の中、今回の見学を快く受け入れて頂いた社長さんをはじめ、株式会社ラプランタの皆さんに感謝のお礼を申し上げたい。誠にありがとうございました。

本稿は、総合経営学科 成 耆政 准教授より寄稿いただきました。
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