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2010/05/25
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戦争を戦い抜いた最後の軍人、小野田寛郎氏講演会開催貴重な実体験の講演に約800人が聴き入る

五月晴れと呼ぶにふさわしい快晴となった5月15日(土曜日)。本学は、松本大学開学10周年に向けての記念講演会として、財団法人小野田自然塾理事長であられる小野田寛郎氏をお招きし、講演会を開催した。最後の軍人として知られる小野田氏ということもあり、約800人が講演に聴き入った。

 講演のテーマは、『極限に生きる』~人は一人では生きられない~。今となっては大変貴重である戦争体験や人生哲学を、実際の具体例に沿ってご講話いただいた。
 まず、戦地において最も重要なことは食料の確保である。小野田氏は、バナナを煮、そこにココナッツミルクを入れたものや、銃で牛を仕留め、干し肉にしたもの等を食し、飢えをしのいでいたそうである。また、雨に濡れてしまうとなかなか服が乾かず、病にかかる可能性が高まってしまうため、戦地で最も恐ろしいものは、敵ではなく雨ということも語られていた。
 また、私たちは、小野田氏は一人で戦っていたと認識しがちであるが、当初は数人の部隊を形成していたという。その中で徐々に仲間を失い、最終的に小野田氏が生き残った形だ。そのような状況の中で小野田氏は、自分たちの環境や状況が、部隊の士気に大きく影響すると語られた。例えば、上述したように雨が降ったりと環境が悪い時には、仲間同士で銃口を向けあって喧嘩をすることがあったという。しかし、好環境時には、自然と前向きな言葉が隊員から出ていたという。小野田氏も仲間の言葉で何度も前を向くことができたようだ。「苦しい時こそ笑い飛ばせ」。小野田氏は経験からこのようなメッセージを送ってくれた。
 小野田氏は、極限状態になった人間の潜在能力にも触れられた。自らが極限状態に至ったとき、10km先の敵の動きや、わずかな葉の動きまで見えるようになったという。「10km先が見えるので、銃弾を避けることさえできた」と驚きの実体験を語られた。
 さらに、次のような体験も語られている。「帰国後、病院に入院している時に、安全な場所にいるにも関わらず、夜になるとわずかな音や振動で目が覚めてしまう。体は寝ていても神経はずっと起きているようだった」。長きに渡る戦場にて研ぎ澄まされた感覚は、なかなか元に戻らなかったという。

 以上のように、人間の潜在能力は、本当に命をかけてやろうと思えば、様々な能力を最大限に引き出すことができることを小野田氏は語られた。また、それと同時に「人間というものはなかなか思い切ることができないのも事実である。」とも語られた。しかし小野田氏は、「人間は生きるために生まれてきている。潜在能力を引き出すためには、明確な目標を持ち、目標を達成するために覚悟を決めることが大切である」という人生哲学を、私たちに伝えてくださった。

 講演が瞬く間に過ぎ去ったと感じたことが、非常に充実した講演だったことを物語っていた。講演終了後には、会場にて販売した小野田氏の著書を購入する方が数多く見られ、こちらも講演の充実ぶりを表していた。

 最後に、小野田氏の今後の更なるご健勝を心よりお祈りすると共に、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

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