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2009/01/13

金融危機に揺れる地域金融について実践的に学ぶ 総合経営学科「地域金融事情」(太田勉教授担当)で連続特別講義

米国発のサブプライムローン問題が世界的な金融経済危機に発展する中で、地域経済へも悪影響が広がり、地域金融機関の業績悪化ともあいまって中小・零細企業の資金繰り悪化が懸念されています。こうした状況を踏まえ総合経営学科の2008年度後期講義「地域金融事情」の一環として、昨年10月から実施してきた地元金融機関関係者等による連続特別講義(全9回)がこのほど終了しました。

 今回の金融危機により企業金融が逼迫化する中で、中小・地域金融機関は地域密着型金融の機能をさらに深化させることにより、地域経済において重要な役割を担う中小企業の金融ニーズの高度化・多様化に応えていくことがこれまで以上に求められています。

 今回の連続特別講義における主要な論点を整理すれば、次のとおりです。



① 地域金融機関は地域が基盤であり、地域の特性を活かした金融商品・サービスの提供により金融ニーズに的確に応えていくのが地域金融機関の役割である。地域銀行、協同組織金融機関(信用金庫、信用組合、農協など)とも「地域密着型金融」(地域企業・社会との共存共栄)を標榜してきたが、金融市場の混乱による損失(保有有価証券の値下がり)や融資先の業績悪化に伴い経営環境が悪化しているため、融資先企業の支援体制を強化しつつ金融機関自身の一層の経営効率化を進めるのが喫緊の課題である。



② 貸出面をみると、県内企業向け貸出が右肩下がりの状況にある中で、企業業績が悪化しており、各金融機関とも中小・零細企業の経営支援に注力している。また各金融機関が積極的に取り組んでいる個人向け住宅ローンの拡大については、住宅ローン需要が減退しているため、競争が一段と激しくなっている。



③ 投資信託等は金融危機の深刻化に伴い販売不振に陥ったが、その半面、預金は順調に増加している。投資信託等の投資型金融商品の拡大が金融機関の収益源となるとの見方は変わらず、個人リテール強化の方針の下で、各金融機関とも販売体制の強化に取り組んでいる。



④ 資金の流れを「官から民へ」と転換する政策金融改革によって、2008年10月に新しい政策金融機関(日本政策金融公庫)誕生した。金融危機によって県内中小零細企業の業績や資金繰りの悪化が深刻化し、政策金融に対する需要が高まる中で、政策公庫が地域金融機関とも連携しつつ環境変化に適応した企業を支援し、地域金融の円滑化に貢献していくことが望まれる。



⑤ 世界大恐慌の再来が懸念されるほど証券市場は萎縮しているが、「貯蓄から投資へ」の流れに変化はなかろう。証券会社のビジネスモデルも問われているが、地銀系証券会社のような証券子会社を武器とした銀行の新しいビジネスモデルは、紆余曲折を繰り返しながら確立されていく見込み。銀行系証券会社のメリットとしては、顧客情報の圧倒的格差、出店・維持コストの大幅な軽減、銀行の金融デパート化に伴う金融機関の生産性向上などが挙げられる。個人、法人の投資家から信頼されうる金融機関のみがすべての利益を獲得できる世界となろう。



2008年度後期「地域金融事情」特別講義一覧



第1回 最近の銀行界の動き(10月24日)

 全国銀行協会 金融調査部長 神門 隆 様



第2回 地方銀行の役割と八十二銀行の営業戦略(10月31日)

 八十二銀行 法人部 副部長 山岸一彦 様



第3回 地域金融機関としての長野銀行の現況と役割(11月 7日)

 長野銀行 常勤監査役 酒井 尚 様



第4回 松本信用金庫の役割と最近の動向(11月14日)

 松本信用金庫 融資部 融資企画課長 洞 修二 様



第5回 地域金融における大手銀行の役割と最近の動向(11月21日)

 みずほ銀行 松本支店 副支店長 福間俊介 様



第6回 信用組合の経営戦略(11月28日)

 糸魚川信用組合 会長 江口清司 様



第7回 中小企業金融における政府系金融機関の役割(12月12日)

 日本政策金融公庫 松本支店 国民生活事業統轄 宮川 斉 様



第8回 銀行系証券の新しいビジネスモデルについて(12月19日)

 八十二証券 常務取締役 神谷尋文 様



第9回 JAの地域金融機関としての役割(1月 9日)

 長野県信連 JAバンク統括部 部長 山岸 享 様
 本文は、総合経営学部総合経営学科の太田 勉教授から寄せていただきました。
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