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2008/12/26

ノーベル物理学賞 受賞記念特別寄稿 Belle実験に参加して

Belle検出器と研究者(前列白いシャツが浜崎准教授)

2008年度ノーベル物理学賞を受賞した小林誠氏・益川敏英氏の研究に従事し、高エネルギー加速器研究機構に勤務していた、本学松商短期大学部経営情報学科長の浜崎 央准教授から受賞を祝う回想録を学報蒼穹第93号に寄稿いただきましたので、紹介します。





Belle実験に参加して

松商短期大学部経営情報学科長 浜崎 央



 2008年10月、日本人3人のノーベル物理学賞受賞が伝えられた。これまでも、日本人の受賞は何度かあったが、今回の受賞は、私にとっては特別であり、今まで以上に大きな喜びと、興奮を感じることとなった。というのも、私は、松商短大への赴任前に、高エネルギー加速器研究機構という研究機関で研究に従事しており、そのときの研究内容が少なからず、今回の受賞に関わりがあったためである。

 今回の三人の受賞者のうち、小林誠先生と益川敏英先生は「クォークが自然界に少なくとも三世代以上ある事を予言する、対称性の破れの起源の発見」という業績でノーベル賞を受賞されている。30年以上前に発表されたこの理論は、2001年に米国スタンフォードのBaBarと高エネルギー加速器研究機構のBelleという二つの検出器によって、それぞれ独立に検証された。私は、幸運にもこのBelle実験に、実験開始前から、今回の成果が発表された頃まで参加していた。当時は、まだ大学院を卒業したばかりであったため、貢献度という点ではそれほどのものではなかったが、それでも、今回の受賞は何年も前から心待ちにしていた受賞である。

 このBelle実験は、世界の約50の研究機関から約300人の研究者が参加している巨大な国際共同実験である。私が参加していたのはもう10年近く昔のことになるが、今でもその当時の状況はよく覚えている。同時期に実験を開始した米国のBaBarとの競争のため、それこそ言葉通り、寝る間を惜しんで実験を行っていた。研究者達は、信念と誇りをもって問題を一つ一つ解決していき、一つの大きな成果をあげたことになる。私も解析用ソフトウェア開発グループに所属していたが、周りの研究者達に多くの刺激を受け、言葉にできない程の苦労もあったが、同時に一つの目標に向かって突き進む喜びも経験した。今回の受賞で、益川先生がおっしゃっていた「ノーベル賞の受賞よりも、実験で自分の理論が証明されたことの方が嬉しかった」という言葉には、当時の苦労が報われる思いがし、本当に嬉しく感じている。

 Belle実験は今でも継続され行なわれており、多くの成果を発表している。わずかでも関わった者として、今後のますますの発展を祈願したい。
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