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2008/03/18
  • アウトキャンパス・スタディ事例

学生に伝えたいこと

習うより慣れろとよく言われる。人間は経験がすべてであり、それが自分の生きる糧となり、宝になるのだと思う。だから、栄養士という人間を相手にする職業を目指す学生には、知識先行の頭でっかちな人間になってほしくないという願いがあった。松本大学にはアウトキャンパス・スタディというすばらしい制度があり、私が担当する食品学実験において、食品加工と食の安全の二つをテーマに㈱高山製粉と㈱イナリサーチに伺うことにした。高山製粉では、併設するそば道場にてそば打ち体験を行った。食品製造において機械化が進んでいる中、最後の大事な調整は今でも人の経験である。原料の状態、天候に左右されるからである。そば打ちについても同じである。そばは小麦粉のようにグルテンを形成しないため、麺への加工が難しい。それを補う「つなぎ」、そして粉を均一な生地に仕上げる「水回し」や「くくり」など、大事な工程を体験できたと思う。学生が打ったそばは、どれも個性的で何よりおいしかった。貴重な体験ができたと思う。次に向かったイナリサーチは、食の安全という別の観点から食を考えることとなった。食の安全は人間が長年の経験の中で食べてはいけないもの、よくない食べ合わせ、食べられるようにする調理法などを確立してきた。そして、特定保健用食品など、食品に健康を求める今日、食の安全がさらに重要視されてきた。そこで、イナリサーチでは業務を通して食の安全の考え方、その評価方法、動物実験の意義などを紹介していただいた。このレクチャーに興味を持った学生はとても多く、施設の見学を希望する声が多く出た。今日を共にした学生すべてが管理栄養士や食品関係の職に就くとは思わない。しかし、この日の経験から何でもいいから感じ取ってもらって、将来に生かしてもらいたいと願う。

本稿は、健康栄養学科の矢内和博専任講師が寄稿した、学報「蒼穹」第90号から掲載しています。
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