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2007/12/25

総合経営学科太田勉教授担当の「地域金融事情」で連続特別講義

総合経営学科の2007年度後期講義「地域金融事情」の一環として、10月から12月にかけて金融機関関係者による実践的な特別講義(全8回)を実施しました。地域金融に関する特別講義の開催は、2005年度、2006年度に続き3年目となりました。3年間の講義内容を比較してみると、懸案であった不良債権処理の進捗、日本銀行によるゼロ金利解除、「貯蓄から投資へ」の流れに対応した法制整備、郵政民営化による巨大なゆうちょ銀行の誕生、さらには他県地銀・大手銀行の相次ぐ県内進出などに伴い、県内金融機関においても「将来を見据えた前向きな経営戦略への転換」が進んでいます。今回の特別講義シリーズにおける主要な論点を整理すれば、次のとおりです。



 地域金融機関は地域経済の上に成り立っており、地域の金融ニーズに的確に応えていくのが地域金融機関の役割である。地域銀行、協同組織金融機関(信用金庫、信用組合、農協など)とも「地域密着型金融」(地域企業・社会との共存共栄)を標榜しているが、預金金利、投資信託販売、個人向け住宅ローンなどの分野において金融機関・業態間の競争が激化してきているため、金融機関自身の一層の経営効率化が課題である。

 まず預金面をみると、日本銀行がゼロ金利政策を解除した昨年(2006年)に続き、今年(2007年)も秋口から地元金融機関が相次いで定期預金の特別金利キャンペーンを実施するなど預金獲得競争がみられた。また各金融機関が投資信託の販売に積極的に取り組んでおり、投資信託は家計にとって身近な金融資産として定着しつつある。

 一方、貸出面では、県内経済活動の回復が捗々しくなく、県内企業向け貸出は右肩下がりの状況が続いているため、各金融機関とも個人向け住宅ローンの拡大に注力しており、優遇金利商品や新規顧客開拓のための新商品開発など、競争が激しくなっている。

 こうした中で、大手銀行は「県外・海外情報の提供」や「グループ総合力を活かした提案型営業」という持ち味があり、協調融資などの分野では地域金融機関との提携も進めている。

 中小企業は「機動性、柔軟性、創造性を発揮する日本経済のダイナミズムの源泉」であるが、零細企業の中には経営基盤の脆弱性等から民間金融機関の融資ベースには乗りにくい層も存在する。資金の流れを「官から民へ」と転換する政策金融改革によって2008年10月に誕生する新しい政策金融機関が、地域金融機関とも連携しつつ環境変化に適応した企業を支援し、地域金融の円滑化に貢献していくことが望まれる。

 県内企業の中には海外との取引を拡大する企業も少なくないが、世界中の企業が次々と国境を超え、労働者がネットと通信で国境を越える「グローバル化したフラットな世界」では、地方でもチャンスがつかめる。バランスの取れた金融システムを構築し、リスクマネーが適切に産業界に供給されれば、産業構造の歪みが是正され、地域活性化にもつながろう。


第1回 最近の銀行界の動き(10月24日)

     全国銀行協会 金融調査部長 増田 豊 様

第2回 地方銀行の役割と八十二銀行の営業戦略(10月31日)

     八十二銀行 営業統括部 副部長 山岸一彦 様

第3回 地域金融機関としての長野銀行の現況と役割(11月14日)

     長野銀行 常勤監査役 酒井 尚 様

第4回 地域金融における大手銀行の役割と最近の動向(11月21日)

     みずほ銀行 松本支店 支店長 吉田勝彦 様

第5回 協同組織金融機関の役割と最近の動向(11月28日)

     松本信用金庫 業務部長 洞沢好次 様

第6回 JAの地域金融機関としての役割(12月5日)

     長野県信連 JAバンク本部 副本部長 南澤秀明 様

第7回 中小企業金融における政府系金融機関の役割(12月12日)

     国民生活金融公庫 松本支店 支店長 滝沢 泉 様

第8回 証券市場の役割と地域金融(12月19日)

     野村證券 松本支店 支店長 綱島和仁 様
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