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2005/07/13

地域金融に関する特別講義(全8回)の総括 総合経営学部 太田勉教授「金融システム論」

5月から実施してきた、総合経営学部太田 勉教授の担当する「金融システム論」の特別講義シリーズ(全8回)が、7月11日(月)に終了した。

 地域はもとより日本の金融経済の担い手として、第一線で活躍されている特別講師による今回の講義は、学生にとって大変貴重な体験になったはずだ。実際に「一連の講義を通じて長野県の金融機関の現況がよく理解できた」という感想が寄せられ、その内容を要約すれば、「長野県には多様な金融機関が活躍しており、地域金融面で特色を異にする様々な金融機関が競争や協調(補完や提携)を通じて、それぞれの得意分野で力を発揮し、地域経済に貢献していくことが期待される」ということになろう。

 以下は、太田勉教授による総括である。

【主要な論点】

① 地域経済と地域金融機関は「運命共同体」のようなものであり、地域金融機関には地域再生に向けたシンクタンク機能やコンサルティング機能が求められる。地域金融機関が地域企業に対して「円滑な資金供給」という役割を果たしていくためには「強い収益力」が必要な時代になっている。この点は、利潤追求が目的ではない協同組織の金融機関にとっても同様である。

② 大手銀行は、県内の店舗数は少ないが全国や海外のネットワークを活かし、地域企業に情報(商売)を提供する「提案型営業」を展開するとともに、協調融資の分野などで地域内のネットワークを張り巡らせている地域金融機関との連携を進めている。

③ 公的金融の分野では、郵便局は地域金融機関として、地域住民にあまねく公平に基礎的な金融サービスや生活保証を提供する役割を担い、地域密着型で業務を行っている。また、政府系金融機関は、民間の金融機関が供給困難な資金(長期資金や金融逼迫期の資金供給など)を安定供給する「補完金融」や民間金融機関だけでは対応できない分野に対して資金を供給する「政策誘導」などに加え、地域金融機関との連携やコンサルティング機能の発揮などにより地域の中小企業をバックアップしている。

④ 保険会社は、業務分野の規制緩和の進展に伴い垣根が低くなり、「総合保険サービス提供」の時代に入った。また高齢化社会の進展に伴い、生保は社会保障の中枢を担う「社会福祉事業」へと変貌することが期待されている。

⑤ 証券市場では、「貯蓄から投資へ」の流れの中で、企業の株式市場を通じた資金調達が堅調に推移しているほか、投資信託が販売ルートの多様化(銀行等に加え、10月には郵便局でも販売開始)により家計にとっても身近なものになりつつあるなど、地域においても資金仲介経路の多様化が進行している。

⑥ 地域金融の円滑化のために、日本銀行は、地域金融機関の経営状況と地域経済の実態の把握に努め、地域経済の発展を側面からバックアップするという役割を担っている。
 ご協力いただいた特別講師の方々に感謝申し上げるとともに、今後とも実践教育を重視するとのスタンス(現場主義)に立って、こうした取組みを発展させていきたいと考えているので、引き続きご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げたい。





≪05年度前期「金融システム論」特別講義一覧≫

 第1回 5月23日 地域金融における日本銀行の役割

  荒木 光二郎氏 日本銀行松本支店次長

 第2回 5月30日 地方銀行の役割と八十二銀行の営業戦略

  舟見 英夫氏 八十二銀行営業統括部副部長

 第3回 6月6日 生命保険会社の役割と今後の展望

  國井 秀樹氏 日本生命保険松本支社次長

 第4回 6月13日 地域金融における大手銀行の役割と最近の動向

  福田 千顕氏 みずほ銀行松本支店長

 第5回 6月20日 郵便局の地域金融機関としての役割

  神津 重敏氏 日本郵政公社松本郵便局長

 第6回 6月27日 中小企業金融における政府系金融機関の役割

  工藤 英修氏 中小企業金融公庫松本支店長

 第7回 7月4日 地域の金融機関としての長野県信用組合の現況と役割

  堀 励氏 長野県信用組合監事(前理事長)

 第8回 7月11日 証券市場の役割と最近の動向

  濱田 隆徳氏 野村資本市場研究所主任研究員
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