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2005/07/11

証券市場の役割と最近の動向 ――「金融システム論」特別講義第8回

7月11日(月)には、野村資本市場研究所研究部の濱田主任研究員から「証券市場の役割と最近の動向」というテーマで講義をしていただいた。「銀行(経由の資金の流れ)と証券市場の違いがよく理解できた」「これからの金融の姿がイメージできた」と受講生に好評だった。講義の要旨は、次のとおり。
 金融(お金を融通する仕組み)の中で、比較的長めの資金を供給するのが証券市場の役割である。証券会社は、①投資家と企業の仲介役、②取引に必要な情報を流す、③経済の動きを活発にする、といった役割を果たしている。直接金融(証券市場を経由した資金の流れ)の特徴としては、①リスクとリターンは投資家が引き受ける、②証券会社などは投資家と企業の仲介を行う、③投資判断は投資家が行う、④企業は担保なしで資金調達できる、⑤主に返済義務のない無期限の資金を提供する、といった点が挙げられる。

 次に、証券市場の動向を概観しておこう。株式流通市場の動向をみると、外国人が約5割と圧倒的なシェアを占めているほか、個人もネット取引の拡大からこのところ伸張し3割のシェアを占めるに至っている。外国人の株主が増えた結果、企業の経営スタイルとして欧米流が浸透しつつある。また、債券流通市場をみると、金融機関が貸出の減少に伴い国債の運用を大幅に増加させており、金利変動が金融機関の収益を左右する時代となった。

 企業の資金調達動向をみると、97年以降、企業が資金余剰主体に転化する中で、設備投資は03年から前年比で増加する循環に入っているが、貸出は減少傾向を続けている。資本市場を活用した資金調達の動向をみると、公共債の発行額が増加傾向にあるのに対し、民間債(社債)の発行額は減少している。一方、上場件数は増加しており、株式市場を通じた資金調達は堅調に推移している。

 近年、「間接金融から直接金融へ」が指向される中で、両者の中間的な「市場型(間接)金融」の中核をなす証券化市場は、住宅ローン証券化を中心に急速な拡大が期待される。

 最後に、これからの金融の姿を展望してみよう。第1は、郵政民営化のインパクトである。現在審議中の郵政民営化法案が成立すると、銀行、証券会社、保険会社、信託銀行の金融商品を一手に販売できる巨大窓口ネットワーク会社が出現する(金融のコンビニエンス化)。この5年間に民間金融機関が各業態とも店舗数を減らす中で、郵便局数は1割近く増加している。郵便局は10月から開始する投資信託の販売額を年間30~40兆円(現在の投信発行額に匹敵する規模)と見込んでおり、投信が家計にとっても身近な存在になろう。

 第2に、民間金融のすべてがリテール(個人部門)を強化する動きが予想される。米国のシティグループでは、グローバル個人金融が純利益の69%を生み出している。これに対し、日本では三菱東京FGの利益のうちリテール部門のシェアは12%に過ぎないからである。

 第3に、投信の銀行等窓版が99年に認められてから、株式投信の銀行等窓販が急増する一方、証券会社のシェアは低下している。投信販売額は都銀に次いで地銀でも増加が目立ってきており、将来、投資信託は銀行で購入する時代になるかもしれない。

 第4に、地域金融機関は、融資が低迷する中で、金融商品販売業(リテール)、地域投資銀行業、資産運用業という新たな3つの柱のうち、どのビジネスモデルを目指すのかが問われることになろう。
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