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2005/06/13
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地域金融における大手銀行の役割と最近の動向 ――「金融システム論」特別講義第4回

6月13日(月)には、みずほ銀行松本支店の福田支店長から「地域金融における大手銀行の役割と最近の動向」というテーマで講義をしていただいた。受講生からは、「大手銀行と地方銀行の違いや、大手銀行が地域で果たしている役割が良く理解できた」との感想が多かった。講義の要旨は、次のとおり。
 企業と金融機関の関係は、時代とともに変化している。高度成長時代は、資源(ひと・もの・かね)を投入すれば企業が成長できた右肩上りの時期であり、金融機関の役割は「資金供給機能」や「モニタリング(監視)機能」が中心であった。その後、日本経済がオイルショックを乗り越え、バブルの生成と崩壊を経て安定成長(低成長)の時代に入ると、企業戦略や価値観の多様化が進む一方、不良債権問題に直面し、金融機関の役割は企業に対する「情報提供機能」や「アドバイザリー(提案)機能」が中心へと変化してきた。
 こうした中で、90年代には、大手銀行(長期信用銀行3行・都市銀行13行)は、いわゆる護送船団方式の崩壊やビッグバン(金融の自由化)の到来に直面し、単独での銀行経営が難しくなり、合併・再編による生き残りを選択することになった。この結果、長期信用銀行はなくなり、大手銀行は5グループに集約された。04年度には大手銀行の不良債権問題はほぼ目途がついてきたため、銀行の経営戦略も、不良債権の削減、コストの削減から収益拡大(手数料収入の増大など)に向けた取り組み強化へと転換しつつある。
 本題の「地域金融における大手銀行の役割」を考えるに際して、大手銀行と地方銀行の役割の違いを概念的に整理しておこう。銀行の業務を「情報(商売)の流れ」として捉えると、地方銀行の場合は「県内 → 県内(一部、県内 → 県外)」という流れになろう。これに対し、大手銀行(及びそのグループ)の場合は「県外 → 県内」または「海外 → 県内」が主流ということになる。つまり、地方銀行は県内の情報ネットワークの密度が濃いのが強みであるのに対し、大手銀行は日本全国のネットワークを活かし県外や海外の情報を県内に提供できるという優位性があると考えている。
 大手銀行が地域金融の中で果たしている役割は、こうした県外や海外の情報をもとに企業に対して「提案型営業」(ソリューションビジネス)を推進していくことである。みずほグループの事例で説明すると、こうしたビジネスに対するニーズが強いため、中堅・中小企業専門の支援チームの人員は02年度に比べ倍増しているし、関連手数料も業務計画を上回るペースで増加している。
 具体的なサポート事例はいろいろあるが、ここでは長野県で事例の多い海外進出サポートを取り上げてみよう。みずほグループでは、中国での邦銀No.1のネットワーク(9拠点)を活かし、地域企業の中国進出を初期段階からサポートしている。情報やアドバイス能力の面で、地銀とは差別化されたサービスを提供し、地域企業の中国展開に貢献していると考えている。一方、近年増加傾向にある大型プロジェクトに対する協調融資(シンジケートローン)の面では、地銀と連携する案件も出てきている。その他にも、「M&A」「ビジネスマッチング」「ベンチャー企業サポート」等、全国のネットワークを活用したソリューションビジネスを展開中である。
 以上のように、地域金融面で大手銀行と地方銀行はアプローチの仕方や手法が異なるといえるが、大手銀行としては地方銀行の補完や地方銀行との提携により、それぞれの得意分野で力を発揮し、地域経済に貢献していきたいと考えている。

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