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2005/05/24
  • イベント情報

地域金融に関する特別講義を開催総合経営学部 太田勉教授「金融システム論」

特別講師を務められた日本銀行の荒木 光二郎 氏

冒頭に日本銀行の業務についてのビデオ上映が行われた

総合経営学部の05年度「金融システム論」講義の一環として、5月から7月にかけて地域金融の動向に焦点を当てた特別講義を8回にわたって実施することを計画している。地域の金融機関等で現在ご活躍の方々に特別講師をお引き受け頂いた。一連の特別講義を通じて「金融の生きた知識、情報を得られる」ものと期待している。

  5月23日(月)には、トップバッターとして日本銀行松本支店の荒木次長から「地域金融における日本銀行の役割」というテーマで特別講義をしていただいた。具体例やデータをもとにした内容で受講生に好評だったので、講義の要旨を紹介する。

  地域金融機関の経営は地域経済の動向に大きく左右される。地域金融面で日本銀行松本支店が果たしている役割としては、地域金融機関の経営状況把握と地域経済の実態把握が挙げられる。
 まず長野県の経済動向をみてみると、製造業の業況感は全国に比べ景気変動の振幅が大きいが、均してみれば全国より良好で、県内製造業の底力を示している。一方、非製造業は90年代後半の長野オリンピック・高速道路建設といった特需が剥落してからは全国よりも悪く、苦戦を強いられている。業況感の良好な製造業も、地元企業の海外展開の影響で県内生産は減少しており、製造業に頼れる状況ではない。また県財政も、他の地域と同様に赤字体質で、歳出削減を迫られており、地域経済は活況な時期とはいえない。
 こうした中で、県内金融機関の預金動向をみると、3月末まで1%強のプラスの伸びを維持しており、ペイオフ解禁拡大(05年4月)にもかかわらず全体として落ち着いた動きとなっている。これは、県内金融機関の経営が全体としてみれば、預金者に信頼されていたことを反映したものと考えられる。一方、貸出動向をみると、前年比1%程度のマイナスになっているが、マイナス幅は縮小しており、回復傾向がみられる。不良債権処理のプロセスでは前年比マイナスはやむを得ない面があるが、地域経済が活発ではなく貸出先が少ないことも影響している。
 地域経済と地域金融機関は「運命共同体」のようなものであり、地域金融機関には、まず「借り手企業への問題解決型のサービスの提供や中小企業金融の再生に向けた取組み」が求められている。加えて「地域活性化のグランドデザインを描くこと」も重要である。金融機関は、情報の集積基地であり、行政ともタイアップしたシンクタンク機能を発揮することを期待したい。例えば、観光振興の面で札幌雪祭りにアジアからの観光客の招致に成功した取組みは参考になるのではないか。
 地域の経済や金融の動向をウォッチすると同時に、地域金融機関等の関係者と意見交換をしながら側面からバックアップしていくのが、「地域における日本銀行の役割」と考えている。

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