健康な地域づくりを目指して

2007年4月開学部の予定で、松本大学に人間健康学部を増設しようとしていた。この学部は、「運動・スポーツ」と「食事・栄養」という２つの分野で、地域の健康づくりを担っていく人材育成をミッションとして掲げようと考えていた。
　新学部の設置構想が趣意書という形で固まってきた2006年3月に、広く市民に向けて、新学部のコンセプトを紹介し、次年度の入学試験を控えた高校生や教員にもアピールしようと、３回のシンポジウムを企画した。この本はその内容を編集したものとなっている。
　１回目は、信州大学医学研究科能勢博教授の「予防医療と健康スポーツ」と題した基調講演につづき、住吉（コーディネータ）、能勢（コメンテータ）の他に、西村一敏、井澤雅子、矢口敏子、根本賢一の四氏をパネラーとして招いて、「スポーツと健康な地域づくり」をテーマに、パネルディスカッションを行った。NPO法人熟年体育大学、地域や企業で実際に健康づくりに取り組んで来ての成果や、感じておられる課題などが話され、同時に開学するであろう大学での取組に対する期待が述べられた。
　２回目は、「栄養と健康な地域づくり」をテーマに、当時長野県短期大学助教授（現、松本大学人間健康学部教授）の廣田直子氏に「食生活と健康」と題した基調講演をいただいた。つづいて住吉（コーディネータ）、廣田（コメンテータ）に加え、上條政次、塩原秀子、根本賢一の三氏をパネラーに、パネルディスカッションを行った。ここでも、病院における生活習慣病対策、熟年体育大学での取組など栄養とスポーツのコラボレーションという視点も据えて語り合われた。
　そして第３回目は、2006年4月、総合経営学部内に新たに観光ホスピタリティ学科が増設されることになっていたので、直前ではあったがこの学科の「福祉と観光を結びつけようという、日本で最初の野心的試みを持った新学科のコンセプト」を紹介しようと企画された。「地域とともに創る新しい"福祉"」をテーマに、白戸洋（コーディネータ）、村岡裕、児玉典子、山岸勝子、相渡砂由莉、尻無浜博幸の５氏をパネラーにしたパネルディスカッションが繰り広げられ、現場の実態とともに松本大学への期待が語られた。
　この３回シリーズで話された内容は、実現なった人間健康学部や観光ホスピタリティ学科の教育の中で、具体的に展開されている。その意味では新学部、学科を知りたい或いはそこで学びたいと思う方々には、今でも十分参考にしていただけるものと思う。