人間健康学部 健康栄養学科 教授 髙木 勝広
ヒ素はすべての海藻類から検出され、特にヒジキはヒ素が多く含まれています。
ヒジキは、食物繊維、ミネラルを豊富に含む食材として有名ですが、ヒ素(元素記号:As)を含んでいることは意外に知られていません。
そこで今回は、スーパーで購入した乾燥ヒジキを実験試料として、ヒ素の定量試験を行いました。
はじめに、ヒジキ中の有機物を分解・除去するために、濃硝酸、濃硫酸、過酸化水素水を使って湿式分解します。
いずれも大変危険な試薬なので、強制排気できるドラフト内で試料を調製します。
白煙があがったり、混ぜたときには多量の泡が出たりするので、慎重に操作を行います。その後、高温(200℃)で2時間ほど分解します。
分解はじめは濃黄色の気体が発生しますが徐々に薄らぎ,最終的には、硫酸の白煙が出てくるので、この時点で分解を終了します。分解液は、ヒジキ特有の黒っぽさは完全に無くなり、透明な液体になりました。
最後に原子吸光光度計を用いて、ヒ素の分析を行いました(最下段の写真)。
学生は、分析値から乾燥ヒジキ1キログラム中に含まれるヒ素の量(ミリグラム)を計算し、最終結果とします。
今回の実験で、ヒジキには比較的高濃度のヒ素が含まれていることが確認できました。
「学生レポート」より感想を紹介します。
- 普段何気なく食べているヒジキに、毒性をもつヒ素が含まれていることを初めて知り、驚いた。
- ヒ素というと、粉ミルク事件で学んだ「毒物」というイメージがとてもあり、そんな危険なものが身の回りにあるはず無いと思っていた。しかし、今回の実験で、ヒジキという日本の家庭によくあるものに含まれていることがわかり、大変に驚いた。
[補足]乾燥ヒジキには、比較的高濃度のヒ素が含まれていることがわかっています。水洗いや水戻し、またはゆでこぼしなどにより、ヒジキ中のヒ素は大きく減少します。
農林水産省の調査では、水戻しにより、戻し水中に総ヒ素の50~66%程度が溶出することがわかっています。食品安全委員会によれば、通常の食生活における摂取で、健康に悪影響が生じたことを明確に示すテータは現在のところありませんとのこと。
ヒジキは、食物繊維、ミネラルを豊富に含む食材です。
重要なのは、特定の食品に偏らず(ヒジキを極端に多く摂取するのではなく)、さまざまな食品をバランスよく食べることです。