人間健康学部 健康栄養学科 教授 髙木 勝広
名残惜しいですが微生物たちに別れを告げ、今回から化学実験の始まりです!
今回は「合成着色料の同定」実験です。着色料は、天然着色料と合成着色料に分けられます。
合成着色料の大半は合成タール色素で、石油から化学的に合成されます。以前は25種類あった合成タール色素ですが、内臓障害や発がん性の疑いなどの理由で、次々に使用禁止となり、現在12品目が許可されています。そういった歴史的背景もあり、食の安全性を脅かす要因の1つとして挙げられます。
それでは実験を始めましょう!
最初に、食品から合成着色料を抽出します。
抽出は、毛糸染色法という方法で行います。毛糸染色法は、食品中の色素のみを分離するもっとも簡易な方法で、酸性で食品成分中から色素を羊毛に結合させ、ついでアルカリ溶液中で羊毛からその色素を溶出させることにより、食品中からできる限り色素だけを分離するというものです。
上二つの写真をご覧ください。ある班は、金平糖を実験サンプルとして用意しました。
金平糖に添加されていた合成タール色素が羊毛に見事染まっていますね。羊毛から色素を分離し、濃縮すれば、抽出完了です!
次に分析です。
分析には、薄層板という白いシートを使います。この白いシートにはシリカゲルという白い粉が塗ってあり、これが色素分離に重要となります。
シートの下側に、鉛筆で線を引き、食品からの抽出液をスポットします。そして、シートをガラスの箱の中に入れます。箱の中には有機溶媒が入っていて、白いシートを浸すと有機溶媒がじわじわ上昇してきます(毛細管現象)。
その溶媒の上昇に合わせて、色素たちも上がり始めます。色素の動きには、速い遅いがあるので、結果として色素が分離します。この分析方法を、薄層クロマトグラフィー(TLC)といいます。
一番下の写真をご覧ください。
これは、色とりどりの粒状チョコレートで有名な某菓子の結果です。
右端のレーンにあるのが食品からの抽出液で、三つの色が確認できます。
一番上から薄い黄色、濃い黄色、青色の順です。
分析の結果、この食品の色は、黄色4号、黄色5号、青色1号の3種類の合成着色料から出来ていたことが分かりました。